この数カ月、個人の価値を基にビットコインで資金調達やトレードができるマイクロトレードサービス「VALU」が話題になっています。
日本では今までなかったような新しいサービスでもあることから、使い方やVALU発行者のルール、法規制なども含め多くの関係者やVALU発行者、購入者などでも議論が巻き起こっています。
そんなVALUによく似た、VALUの原型となるようなサービスは約10年前の2008年から海外では存在していました。
今日は、そのサービスについてご紹介をしたいと思います。
自分の人生を株式のように売買できるように公開して資金調達した男
35歳(当時)のマイクメリル氏は、アメリカオレゴン州ポートランドにあるソフトウェア会社で働きながら、平日の夜間や週末に活動するアーティストでした。
2008年1月26日、メリル氏はKmikeyM(メリル氏のフルネームはケネス・マイケル・メリル)と呼ばれる彼のワンマン証券取引所を自身のウェブサイトで始めました。
⇒マイクメリル氏が立ち上げた「KMIKEYM」というワンマン証券取引所
彼はクラウドファンディングサイトKickstarterのようなプロジェクト毎の資金調達という考えではなく、「自分自身の人生」に投資してくれる人を探そうと考え、ワンマン証券取引所をオープンさせました。
今まで誰も見たこともやったことない「自分の人生を売る株」始めの支援者は誰だったか?
マイク氏は始め、約1,300株を発行しました。この1,300株が彼の新規公開株でした。この1,300株を購入した投資家(支援者)は、主にマイク氏の友人たちでした。
その後、2,000株を追加で発行したときにはクチコミで噂が拡がり、マイク氏とは直接面識がない赤の他人もマイク氏の株式を購入をしてくれるようになりました。
マイク氏が発行した株式には配当金(インカムゲイン)があるわけではありませんが、彼のワンマン証券取引所で取引される株式の価格は日々の取引によって上下をするため、価格が上昇すれば利益を得る(キャピタルゲイン)ことも理論上は可能です。
出資者・購入者には2種類の属性の人達がいたことがわかります。
- ①マイク氏自身を応援・支援するために株式を購入した初期出資者。(1,300株)
- ②噂を聞き興味を持って株式を購入した2段階目の出資者。(2,000株)
出資や投資をするというのは相応のリスクがあるものですが、2段階目に来た人達は噂で買っているので、マイク氏自身が『どういう人か知らない・活動にもあまり興味はない』キャピタルゲイン狙いの人達も数多く含まれていたことでしょう。
2008年の1年間で株価は約2倍になり、その後どんどん膨れ上がる。
2008年1月26日の株価は一株あたり1ドルだったものが、2008年12月31日は2.25ドルに値上がりをしました。
その後、2009年の末には5.9ドルに。わずか2年ほどで6倍になり、2010年の末には9ドルに。
さらに株価は順調に右肩上がりで推移し、株式公開をはじめた2008年からの4年後、2012年には一株20ドルにまでなりました。
わずか4年でマイク氏が発行した株式の価値は20倍になりました。
株式発行者であるマイク氏が行ったこと
マイク氏は、自身の株を購入してくれた株主に向け、定期的にブログで報告書を公開しています。
その報告書には「ガールフレンドと同棲を始める」なども書かれており、その報告に対して株主から苦情が入ったことも。
「同棲なんかしていたら生産性が下がるんじゃないか!」
というのが株主としては懸念事項でした。
これらの経験から、マイク氏の成功体験では
『株主への説明責任を負い、また投資家にも責任を持ってもらうことによって、自身の人生が大幅に改善した』
とのこと。
説明責任がなされていない状況では批判も多いが、自分がどのように思っているか、考えているかを株主に誠実に説明をすることによって状況は変わっていきます。
特に、今後どのようなプロジェクトを行うかということだけではなく、個人として今の人生をどう考え、どのように生きているかという部分に人は興味を持つよう。
株式発行者にとって株主というのは、「リスクをとって株式発行者の成功を応援してくれる人達」です。彼らと良好な関係を築くこと、そのために必要となる情報は適切に開示されることというのが、成功の大きなポイントになるのではないでしょうか。
マイク氏のサイトには議決権を持った株主の投票機能もある
また、マイク氏のサイトでは、株主にも議決権があり、今後の活動に影響を及ぼすような事柄や、「髪の色を変える」などといった個人的なことまで、株主が投票できる機能を持っています。
この投票機能には、YESが何%か、NOが何%かだけでなく、それぞれに投票した株主の名前やその株主が持っている株式保有数も公開されています。
10年後、マイク氏の株価はどうなったか?
2012年にピークをつけた後、2013年にはまた1ドルに逆戻りし、その後16ドル弱まで回復するという大相場っぷり。
この株価の推移をみていると、2013年にマイク氏に何か大きな変化があったのでしょう。
その後どんどん下降していき、2017年現在は約4ドルほどの株価水準になっています。
個人的には、大多数のVALUERのVALUは、このようなマイク氏の株価推移トレンドに似た形を描くのではないかと思っています。
さまざまな論点があるVALUですが、寄付を受ける側もVALUを購入する支援者にも、それぞれの役割に基づいたリスクと責任が伴うことをよく認識しつつ、利用するのがよいのでしょうね。
今後VALUが日本でどのようになっていくのかは、今VALUに関わる一人一人の行動によって決まっていくのでしょう。