「サラリーマンを辞めたい」、「起業したい」、「自分でビジネスを始めたい」、「新しいプロダクトやサービスを作りたい」等など何か新しいことを始めるとき、人は似たような思考を辿っています。
私の今までの経験では、この状況に置かれた時の人の思考にはパターンがあります。ここでは、その起業パターンを夕食の献立に例えながら解説します。
【レベル1】「冷蔵庫にある余り物で、夕食を作りたい」パターン
よくあるのが、「冷蔵庫にトマトとチーズが余っているから、このトマトとチーズを使って、何か美味しい夕食を作りたい」という思考パターンです。
この思考は「何が食べたいのか?」というのは特に決まっていない状態です。決まっていることは、自分が今持っているトマトとチーズを使って、美味しい夕食にしたいという条件だけ。
これは、既に何らかの経験や人脈を持っている40代、50代の方の起業動機として非常に多く見られます。今まで培ったスキルや専門技術を活かして何か新しいことをやりたいというのもこのパターン。
レベル1の段階では、何かやらなきゃいけないとは思っているけど、切羽詰まった状態ではなく、まだまだ余裕がある状態であり、どこに行くか模索中の段階と言えます。
【レベル2】「家族のみんなが今日はハンバーグが食べたいと言っている」から、ハンバーグを作ろうと思っているパターン
夕食の献立を考えるとき、「何食べたい?」と相手に聞いたり、最近ハンバーグを食べてないから、これからみんなはハンバーグが食べたくなりそうだ、と考えるのがこの思考パターンです。
自分がハンバーグが作れるか作れないか、ハンバーグの材料が冷蔵庫の中にあるかどうかなど、いざやろうと思ったら問題になる現実的な制約条件は考慮していません。
それよりも大事なことは、「何を作れば相手が喜んでくれるか?」ということ。このただ1点にフォーカスをするのがレベル2の思考です。
この思考パターンの人は、自分よりも相手を大事にする人です。どうせやるなら喜んでもらいたいんだけど、みんなが何が食べたいかわからないので「これから来るビジネス 20XX」とかで検索したりしています。
【レベル3】「ある日突然、今日はカレーが食べたいから、夕食をカレーを作るんだ」というパターン
レベル3は『カレーが食べたい』という突然湧いた欲求からスタートする思考パターンです。
目的はカレーを食べることただ一つ。なぜなら、自分がカレーを食べたいから。それ以外の理由は特になく、「人は人、自分は自分を貫く正直な人」です。
このパターンで夕食を作る場合、まず冷蔵庫をチェックして、カレーに必要な材料が入っているか確認をします。カレーを作るために足りないものがあればピックアップして、買い物リストのメモに書いてから、スーパーに足りない材料を買いに行く。そうして、材料を揃えた後、やっとカレーを作り始めることができます。
カレーを食べたくない人からすれば、面倒なことこの上なく、「なんでそこまでやるの?」と聞かれることもしばしば。
このパターンは、必要なものをリストアップしたり、スーパーに材料を買いに行ったりと時間や労力、お金はかかりますが、『カレーが食べたい』という目的が共有できている仲間とやれば、一つ一つの作業もイベントになったりします。
いわゆる、ビジョンや目的から、市場を決め、仲間を集め、必要なら資金調達をするスタートアップはこのパターンです。だから、仲間重要、チーム重要という価値観が強くなります。
その結果、カレーが好きやカレーにこだわりを持った人が集まってくるので、必然的に美味しいカレーが作れる確率も高まります。
逆に1人だったら、わざわざ手間と労力をかけて本格的なカレーを作ろうとは思わず、冷蔵庫の余り物で済ませたいと思う人が大多数。
この思考パターンの注意点は、『カレーが食べたい』はみんなで共有してても、ボンカレーが食べたいのか、インドカレーが食べたいのか、タイカレーが食べたいのか、同じカレーでも人によって全くイメージが違ったりする点。
スパイスの調合から吟味した本格的なカレーが食べたいと思っていたのに、
『いざみんなでスーパーに買い出しに行ってみたら、ボンカレーが安売りしてたので、ボンカレーに決まった。多数決で。』
というのは、よくあるパターンです。
もちろんボンカレーも美味しいんですが、今日の日本ではありふれていますよね。ありふれているものに、お客さんがわざわざ高いお金を払うか?という点に疑問が残ります。
【レベル4】「お腹減った…、何でもいいから何か食べたい」パターン
最後のレベル4は「とにかくお腹が減った。何でもいいから何か食べたい」という思考パターンです。
よくある成功ストーリーで、1代で大企業の社長になった創業者は子供の頃貧乏だったとか、ホームレスを経験したことがあるなど、人生のある時期に圧倒的な飢餓感を味わった経験がある人は、この思考パターンが強くなります。
「冷蔵庫に材料もないし、電気もガスも、水道も止まってる。もちろんお金はない。でも、お腹は減った。さぁ、どうしよう?」という状態。
このパターンの場合、一刻も早く何かを作って飢えを凌がなくてはいけませんから、コストをかけずにお腹が膨れるものが献立の最有力候補となります。
「カレー、ラーメン、和食、洋食、中華なんでもいい。とにかくなるべく早くお腹がいっぱいになれば…」
そればっかり考えています。
レベル1〜レベル3の段階というのは、何かしらを持っています。持っているからこそ、持っているものを有効活用したり、相手のことを考えたり、自分の欲求に忠実に動くことができます。
しかし、レベル4の段階というのは何も持っていないのです。何も持っていないけど、なにか作らなければマズイという状態。その結果、前に進まなければいけないハングリー精神と実行力を手に入れているのです。
「起業したい」は「夕食食べたい」と同じ思考パターンです
今回は今までの私の経験から、起業のパターンを夕食の献立になぞらえて解説しました。IT起業アカデミアの起業コンサルティングやお問い合わせでも、これらの思考パターンがとても多く、悩んだりつまづいたりしています。
その人の状態やいる段階によって、前に一歩進むために具体的に必要なものは異なってきますので、まずは自分がどの状態にいるのか適切に把握するのがよいかと思います。
あなたの起業パターンの参考になれば幸いです。