今回は、台湾のスタートアップ事情に関する話です。日本と台湾のスタートアップは何が違うのか?起業家の共通点や違いなど、参考にして下さい。(管理人)
起業家となる2つのタイプ
台湾の起業家は、大きく2つのタイプに分かれています。学生や社会人経験の浅いこれから起業をしようとする人達と、社会に出て5年以上働いた後自分の事業を創り出したいと考えている人達です。
起業家としての経験年数によらず、どちらの起業家もある時点において連続起業家(Serial Entrepreneur)になります。起業家となる人は、”自分の夢を持ちながら、創業に情熱を持ち、会社の運営を続けていきたい“と真剣に考えています。社会人経験の期間によらず、この点はどちらのタイプにも共通しています。
起業時の最大の問題点、起業資金はどのように対処しているか?
そのような夢と情熱を持った起業家が、いざ起業をしようとしたとき、最初の大きな壁が資金調達です。起業の初期段階では、資金のやり繰りをどうするかが大きな課題になります。
台湾では1982年にベンチャーキャピタルが発足し、現在に至るまで30年の間、新興ハイテク産業の50%がベンチャーキャピタルからの投資を受けています。
この10年間の平均年間投資総額は約140億元(2300億円)にのぼり、2012年において台湾国内では199社のベンチャーキャピタルが投資を行なっています。
ベンチャーキャピタルが運営するインキュベーションプログラム
ベンチャーキャピタルの中でも特に、appWorks Ventures(中国語:之初創投)というスタートアップインキュベータが、台湾の若手起業家を中心に人気です。
appWorks Venturesでは、スタートアップの育成を目的とした無料インキュベーションプログラムを運営しています。
このインキュベーションプログラムに参加すると半年間の間、起業家チームは企業経営のノウハウ指導を受けられたり、毎月1回先輩起業家のセミナーや講演会への参加、同期参加チームとアプリ開発等についてディスカッションするワーキングスペースや、起業家達が参加するインターネットコミュニティへ参加する権利を与えられます。
台湾のインキュベーションプログラムから生まれたスタートアップの成功事例
インキュベーションプログラムに参加した起業家チームは、3ヶ月に1度行われるデモデーでプレゼンを行います。
このデモデーには多くの投資家が参加するので、起業家にとっては自分の事業アイデアの実現可能性や投資としての魅力を、投資家に直接伝えられる大きなチャンスになります。
インキュベーションプログラムに参加した起業家チームの中でも、デモデーをパスしたチームは、事業の成功確率が高いと言えます。
過去にデモデーをパスした起業家チームは業界を問わず多岐に渡っており、24時間オンラインでレストランの予約受付や割引券を提供できる
EZTableや、コンテストの賞金ランキングによって人気を競うBounty Hunter(バウンティハンター)、子供向けアプリを主力商品とするQLL(※Quick Language Learningの略。日本語版もある)などが成功しています。
起業志望者がスタートアップに参加するのはいつか?
スタートアップが徐々に流行になるにつれて、卒業生が多くなる毎年6月前後や就職活動期間中に、仲間と一緒に起業を目指す人達が増加する傾向にあります。(※台湾の学制は日本とは異なり、上半期が9月中旬~1月中旬まで、下半期が2月中旬~6月中旬までとなっている)
最近では、夏休み(6月中旬~9月中旬)の間にアルバイトや1年間のインターンシップを探す学生達は、スタートアップベンチャーを第1志望にする傾向があります。
台湾のスタートアップ情報を入手するには?
大学の就職関連情報
大学の産学提携センターやキャリアセンターのウェブサイトに掲載されている求職情報では、ベンチャー・スタートアップ企業と学生とのマッチングを目的とした説明会の開催告知(中国語:媒合會)も見受けられます。
ミートアップイベントやコンテスト
他にも、bNextが月1回主催しているMeet Startup(中国語:創業小聚)といったイベントも、台湾スタートアップベンチャーの情報を得るための有力な方法になります。これらのコンテストに参加することで台湾の専門家とのネットワーキングが構築でき、台湾市場を視野に入れている日本の起業家にとっては素晴らしい経験になるでしょう。
このようなコンテストでは、昨年末に台湾で2日間開催されたMicrosoft Windowsアプリケーション開発フェスティバルがあります。このフェスティバルでは36時間のうちに、78個の素晴らしいアプリケーションが開発され大きな盛り上がりを見せました。
ニュースメディア
最後に、台湾のスタートアップ情報を入手する方法として、台湾及び中国のニュースメディアがあります。台湾のTechOrange(中国語:科技報橘)や中国の36Kr、i黒馬には、スタートアップベンチャーに関する様々なニュースが日々発信されています。
台湾・中国市場を視野に入れている日本の起業家にとって、これらは重要な情報源になるでしょう。
【執筆者プロフィール】
Ismene Weng(チャンイ)
台北在住。台湾大学の現役大学生であり、Microsoft Taiwanのマーケティングアシスタント。
英語、中国語、日本語の3ヶ国語が堪能なトリリンガルで、日々スタートアップに関する情報収集や調査を行なっている。
また、日本の食文化やアニメーションに強い関心を持っており、2013年10月には日本へ留学予定。現在は語学力の更なる向上に励んでいる。