Twitter共同創設者が語る、「10億ドル企業のつくり方」という記事で、TwitterやBloggerの創設者、エヴァン・ウィリアムズが『インターネットで成功するための本質』を語っています。
とても示唆にとんだ役立つ内容なので、まとめてみました。
私たちにとって、インターネットとは何なのか?
「それはユートピア的な世界ではない。本質的には、この世界の歴史に刻まれてきた、ほかの大きな技術革命の多くと変わらない。」
(Twitter共同創業者 エヴァン・ウィリアムズ)
インターネットが登場したとき、よく出てきたキーワードに『ユートピア』や『フロンティア』というものがあります。つまり、理想郷です。
インターネットは、今の現実とは異なる理想的な世界になるという、人々の願望を端的に表したキーワードでした。
インターネットとは結局のところ、「人々が求めているものを与えるようにつくられた巨大な装置」だ。それはユートピアでも魔法でもない。単なる、便利さのためのエンジンだ。
(Twitter共同創業者 エヴァン・ウィリアムズ)
ここで、重要な思想が出てきます。
『インターネットとは、人々が求めているものを与えるもの』
という定義です。
インターネットで経済的に成功するサービスの秘密
そのエンジンをうまく調整できる人、つまり、人間の基本的な問題をより速くシンプルに解決できる人が、大きな利益を得る。
(Twitter共同創業者 エヴァン・ウィリアムズ)
Webサービスでもアプリでもインターネットで成功したいなら、シンプルに『人の欲求を満たしなさい』ということですね。人間の欲求を満たすとは、快の獲得か不快の回避のどちらかということです。
人々のもつ基本的欲求という視点を失い、人々に『次の大きな理念』のようなものを与えようとする者には問題が生じる。
(Twitter共同創業者 エヴァン・ウィリアムズ)
逆に、これらの欲求とは異なるものはインターネットを使ったとしても、うまくいきづらい。社会起業家のような新しい価値観や今とは異なる考え方、生き方、世界観の提示がなかなか成功しづらい理由がこれです。
インターネットを使ったからどうこうではなく、インターネットに参加しているプレイヤーである、人々の欲求がまだその次元に達していないからです。
例えると、MMORPGのような世界でプレイヤーの平均LVが100なのに、LV300で装備できるアイテムを作ったところで売れないのは、当然です。
大多数がマズローの5段階欲求における自己実現欲求までいくわけではありません。
われわれはしばしば、インターネットは新しいことを可能にすると考える。
しかし人々は、これまでいつも行ってきた同じことをしたいだけなのだ。
(Twitter共同創業者 エヴァン・ウィリアムズ)
つまり、私たちの日々の生活においてやっていることを、インターネットや新しいインターネットサービスを使って、『もっと楽に、もっと便利に、もっと安く、もっと早くやりたい』わけです。そういうサービスは、受け入れられる余地がまだまだあります。
インターネットでヒットしているもの
『インターネット上でヒットしているものを見ると、それがつまりは接続の巨大な集まりであることがわかる。フォローは接続だ。いいねは接続だ。』
(Twitter共同創業者 エヴァン・ウィリアムズ)
じゃあ、『実際問題、サービス提供者、起業家として、どうやってユーザーの欲求を満たしていけばいいのか?』というと、そこで出てくるのがコネクティビティ(connectivity)の概念です。
コネクティビティとは、要は、何かと何かを繋ぎなさい、ということです。できれば、今繋がっていないものや、今組み合わされていないものだと、なお良いですね。
インターネットがいま行っているのは、あらゆる人と物、あらゆる出来事と思考を複合的に接続すること。すなわち、接続の、レイヤーに次ぐレイヤーだ。
あらゆる出来事とあらゆる行い、あらゆる到着先、共有されたあらゆる思考、その思考を気に入ったあらゆる人々、これらがすべてますます接続されている……そして、とどまることなく増え続けている。
(Twitter共同創業者 エヴァン・ウィリアムズ)
スタートアップアカデミアでも、0からはてブ(はてなブックマーク)の数を劇的に増やしアクセスアップをする方法で、下記のように書いています。
- 『ユーザーの興味と、提供できるコンテンツを繋げる』ことがインターネットの本質にある。
- インターネットの歴史とは、すべからく『“人”と”興味”を繋げてきた歴史』である。
- インターネットにおいて『人と”人の興味”を繋げること』は価値を生み出す源泉であり、サービスのアイデアを考えるときは、何かと何かを繋げてみる。
『何かと何かを繋げれば、そこには必ず価値が生まれます。』これは、この世界のパターンであり、インターネットも例外ではありません。
『何かと何かを繋げて、今よりもっと便利に』これが、インターネットのヒットパターンです。
人間の欲求をインスタントに満たせる、それがインターネット
「インターネットは人間の欲をより達成しやすくする。すなわち、便利さをもたらす」
「インターネットにおける利便性は、基本的に2つのもので成し遂げられている。スピード、そして、わかりやすさだ」
(Twitter共同創業者 エヴァン・ウィリアムズ)
エヴァン・ウィリアムズは、何と何を繋げれば価値が生まれるのかにも言及しています。彼のキーワードで言えば、スピードとわかりやすさ、です。
つまり、
『スピード』 x『わかりやすさ』 = 『利便性』 = 『人間の欲求の充足』
となります。
『インターネットで本当にヒットしているものが何であるかを研究すると、それらが長けているのは、物事をスピーディーにし、人々に考えさせないことだとわかる。』
『人々は待ちたくないし、面倒なことを考えたくないのだ。』
(Twitter共同創業者 エヴァン・ウィリアムズ)
GoogleやFacebook、Amazon、Appleが好かれる理由は『簡単で、すぐできて、面倒臭くないから』。
彼らは、今まで面倒だった操作から、作業の手順を少なくし、数クリックでできるようにすることで価値を生み出していて、これはインターネットに限らず、コンピューティングや道具の進化にも通じるところですね。Desire Linesを見つけ、それを元に設計し直すわけです。プロダクトデザインの本懐とも言える部分です。
10億ドルを超えるインターネット企業の作り方
最後に、エヴァン・ウィリアムズは、10億ドルを超えるインターネット企業の作り方と題して、こう締めくくっています。
(10億ドルを超えるインターネット企業を作りたいのであれば)
「人間の欲をつかむのだ。これまでずっと続いてきたものが望ましい。そして、欲を突き止めたうえで、現在の技術を用いてステップを取り除くのだ。」
(Twitter共同創業者 エヴァン・ウィリアムズ)
Twitterの会社概要ページを見てみると、こんなメッセージが書いてあります。
確かに、わかりやすい(笑)ですね。
まとめ
- インターネットとは、人々が求めているものを与えるもの。
- インターネットで成功したいなら、人の欲求を満たしなさい。
- 人々は、いつも行っていることと同じことをしたいんだ。
- 何かと何かを繋げて、今よりもっと便利に。
- 人間の欲求を理解し、うまく流れを作りなさい。
- 『スピード』 x『わかりやすさ』 = 『利便性』 = 『人間の欲求の充足』
【雑感】人間が、システムに組み込まれるということ
人間がある種のシステムに組み込まれると、そのシステムの性質は、システムが元々持っている性質以上に、人間行動に則した形に変化をしていきます。
私たちが月に住むようになろうが、火星に住むようになろうが、新しく出てきたものは常に希望であり、理想郷というキーワードで語られ、希望に満ちたそのシステムの中に人が入っていった瞬間に、そのシステムの目的や第一の存在意義は『人の欲求を満たすこと』に変化していきます。
人間がシステムの系に入った瞬間、あらゆるものが人間中心に再設計されていくようになるのが人類の歴史だと言えます。