ある日、年老いたロバが古井戸に落ちてしまいました。
ロバの泣き声を聞きつけた農場主は、すぐに井戸に駆けつけました。
その状況を見た農場主は、『この深い井戸からロバを引き上げる事は
不可能だろう。。』
と判断し、他の動物達の安全を考え、可愛そうだとは思ったのですが、
この井戸をロバごと、土で埋める事を決心しました。
そして、農場の仲間を集め、この井戸を土で埋め始めました。
年老いたロバは混乱しました。
「皆、何をしているんだ? 助けてくれないのか? 今までこんなに
頑張ってきたのに。。 なぜ、助けてくれないんだ? なぜ、俺を
殺そうとするんだ?」
ロバは悔しくて悔しくて、仕方なかったのですが、どうする事もできませんでした。
土が背中に当たるたびに激しく痛み、そして、土がまた背中に当たるたびに悔しく、そして悲しくなりました。
もう、死ぬんだな。
そう思った瞬間、ロバはある事を思いつきました。
「もし、この背中に当たる土を振り払い、 落ちた土を足で踏み固めたら・・土を足で踏み固め続けたら・・上に上がれるのではないか?」
そう考えたロバは、背中に土が当たるたびに、その土を振り払い、足で踏み固め始めました。
土が背中に当たるたびに、激しく痛みました。
想像を絶するほどの痛みを覚えました。 と同時に悲しくなりました。
しかし、ロバは諦めずに何度も何度も、振り払い、土が背中に当たるごとに振り払い、そしてまた振り払い続けました。
振り払っては、踏みあがる。振り払っては、踏みあがる。。
ロバは、何度も挫けそうになりましたが、自分を勇気づけながら、ひたすら続けました。
今まで信じていた農場主に土を落とされ。。
どんなに背中が痛もうと、どんなに泣きたくなっても、そしてどんなに今の状況が最悪に思えようと、ただひたすら希望を失わずに続けました。
。。。
そして最後には、疲れ果て、傷だらけになりながらも井戸を乗り越え、脱出する事に成功したのです。
農場主のロバを殺そうとした行為が、逆にロバを救うことになったのです。