敗れざる人々 三洋電機10万人の今 – 創業家のドンは『ゼロ』を読んでいたの記事で、三洋電機元会長の井植敏氏がインタビューに答えている。井植氏は三洋電機の創業者である井植歳男氏の長男で、三洋電機の社長・会長を18年間務めた経営者です。
大変興味深い内容だったので、インタビューのポイントを抜粋しました。
「親から子へ、子から孫へ」創業家の資本をどんどん弱体化させる創業家の相続について
「大きな問題は、日本という国がまだ、自分の国が資本主義であるということを自覚しておらんということだよ。」(井植敏)
「社会のシステムが資本主義になっていない。例えば事業承継税制なんか、欧米と全然違う。親が子供に事業を引き継げるのは家内工業だけで、中堅になったらもうあかん。全部、相続税で取られてしまう。」(井植敏)
「この国(日本)は資本主義のはずなのに、いつの間にか資本がバラバラにされてしまうんや。今でも生き残っとるのはサントリーと竹中(工務店)さんくらいのもんやろ。」(井植敏)
承継税制ひとつを見ても、この国が資本主義でないことがわかる。親、子、孫と3代たったら資産を全部召し上げるような、そういう社会システムや。そやから日本には本物の資本家がおらんやろ。(井植敏)
欧米にはおるで。父親の代、祖父の代で資産を築いた家が資本家になって、プロの経営者を雇っとる。雇われ経営者はプロだから、結果を出せば高い給料をもらって当然。結果が出なければクビになる。(井植敏)
「資本家」になれない日本は、世代間闘争が起こる可能性がある。
そして、資本主義になれていない日本の社会システムで次に懸念されることは『世代間闘争』です。
「大きな会社にはな。大きな会社にはもうなんにもないわ。でも若い人にはあるんちゃうか。ロマンをもってやっとる人が。」(井植敏)
「でも、日本のシステムがこのまんまやったらな、そういうロマンのある若い人たちが、みんな海外に逃げてしまうで。わしはそれが一番心配や。」(井植敏)
「わしが恐れとるのは世代間闘争や。そのうち100万人の若者が200万人の年寄りを支える時代になる。若者は、やっとられんと思うで。」(井植敏)
創業者を否定する国には資本家が育たない。資本家がいなくては真の資本主義は成り立たない。
「創業家を否定する国には資本家が育たない。資本家がいなくては真の資本主義は成り立たない。」(井植敏)
「創業者や創業家が”成り金”と呼ばれ、尊敬されない社会に起業家は育たない。」(井植敏)
創造的破壊を遂行して新たな価値を生み出した人よりも、出来上がった組織で出世の階段を上った人の方が尊敬される社会で、若者にリスクテークを求めるのは無理な話だ。(井植敏)
ピーク時には、連結売上高約2兆5,000億円にのぼり、世界中に10万人の従業員を抱えた巨大企業、三洋電機。その創業者一族が語る日本の政治・経済システムが抱える課題は、日本で起業家がなかなか増えない大きな要因になっているのかもしれません。
そして、起業家が増えず、資本家が増えなければ、社会システムを維持するコストは『一体、誰が払い続ける』のか。
そのあたりもよく考えて、未来を見通す必要がありますね。