先日、クライアントから『NTTの固定電話がひけない環境なんですが、各拠点で音声通話をできるようにしたい』というご相談を受けました。そこで、NTTの固定電話をひかなくても、音声通話ができる方法にどんなものがあるか、調査をしたのでまとめておきます。
NTTの電話回線がひけない環境で、音声通話環境を構築するには?
電話や内線をひきたいというとき、真っ先に思いつくのは『固定電話をひくこと』です。しかし、環境によっては、電話番号割当てができず、固定電話がひけないという場合があります。
そんな時、どうすれば良いのでしょうか?
規模が大きいなら、PBX(宅内交換機)の設置を検討するが…
一般的には、企業で使うような音声通話の各拠点間通信の場合は、VoIPに対応したPBX(構内交換機)などを設置する方法を取りますが、これは予算的にも大きくなりがちですし、スモールビジネスにおいては結構な費用負担となります。
そこで、より低価格かつ小規模でも導入ができるものとして、考えられるのは『Skypeを使った音声電話設備を作ること』です。
Skypeを使った音声通話設備構築のメリット
Skypeはインターネット接続環境があれば、どこでも使えるのが大きなメリット。Skypeというと、パソコンやスマートフォンが必要というイメージがあるかもしれませんが、『Skype機能を内蔵した固定電話機』を使えば、パソコンなどの設備も不要です。
また、Skype内蔵の固定端末だけあればいいので導入が容易なこと、そして、Skype利用なので導入後のランニングコストが安価であることなどが挙げられます。(※Skype同士だけでいいなら、ランニングコストも0円で済みます)
Skype内蔵電話端末を各部屋に設置し、各部屋の電話1つ1つにSkypeIDを取得すれば、通話し放題の音声通話環境が構築できます。
Skype内蔵パソコン不要の固定電話とは?
まず、Skype内蔵の固定電話とはどういうものか見てみましょう。製品はいろいろありますが、例えばこういうものです。
Skype内蔵パソコン不要の固定電話の選び方
では、実際にSkype内蔵電話として、どのようなものを購入するのが良いか検討していきましょう。いくつポイントがあるので、順をおって解説します。
①まず、使えるネットワーク環境を確認すること
まず、確認しなければいけないのはネットワーク環境です。特に、
- インターネットが使えるのか? ⇒ 使えない時はインターネット契約が必要です。
- インターネット接続環境は、『有線LAN』か、『Wi-fiのみ』か?
を確認しましょう。ネットワーク環境の確認が終わったら、端末選びです。
Skype内蔵の固定電話は、Skype公式のSkypeフォンもありますが、2015年12月現在、どこで入手できるのか不明ですし、Skypeフォンは海外製が多いので日本語で使えるのかどうかも不明なので、これは選択肢から除外せざるを得ません。
②有線LANが使えるなら、Skypeフォンは「XS2008CA-BK」が一番おすすめ。
有線LANが使えるなら、2015年現在でも入手可能なもので一番オススメなのは、TECOのスカイプ電話機、XS2008CA-BK(国内サポートあり)です。価格も1万円前後と手軽で、日本語も使えるし、かなり安心のSkypeフォンです。マニュアルもオンラインで公開されています。
XS2008CA-BKの特徴としては、
- 通話にパソコンは不要で、設定も簡単。この電話とインターネット回線だけあればいい。
- 多国語サポートでSkypeアカウントとパスワードを入力するだけで、すぐに通話を開始できる。
- スピーカーと1.8型液晶画面を搭載。
- ハンズフリー通話ができる!(これは嬉しい!)
- 最大500件のコンタクトリスト機能を装備。
- XS2008CA日本語マニュアルもオンラインで閲覧可能。
などなど機能も豊富。実際に導入された方のレビューもあるので、参考に。
既に有線LANのインターネット環境があるなら、この方法が一番簡単に済みます。だって、XS2008CA-BKをAmazonで接続拠点の個数分買って、SkypeIDを取得して、設定すれば即完了。かかるコストも接続拠点数 * 1万円の投資で済む。導入後のランニングコストは0円というお手軽さです。
固定電話番号が必要ならSkypeで契約すれば取得できるし、国内固定電話かけ放題や、海外へも定額かけ放題なんてことができるので、これは本当にオススメです。
他にも固定電話型であれば、BELKIN(ベルキン)のF1PP010ENkrSKというのもあります。こちらの方がデザインはスタイリッシュな印象ですが、価格が15,000円前後でややお高めで、日本語が使えるかは不明。好みに応じて選ぶのが良いかと思います。
③Wifi環境のみしか使えないときは、Skypeスマートフォンやイーサネットコンバータを使います。
有線LANが使える環境なら、上記のXS2008CA-BK一択ですが、Wifi環境しか使えないとなると、やや厄介です。というのも、XS2008CA-BK は有線LANのみでWifiはサポートしていないから。こういう時に使うのは、「イーサネットコンバータ」です。
イーサネットコンバータとは何かというと、一言で言えば、「有線を無線に、無線を有線に変換するための機械」です。よく使われるのは、テレビですね。テレビは有線LANのポート(RJ-45)がついてるものが多いですが、Wifiは使えなかったりする。そんなときに、このイーサネットコンバータをTVに繋いで、無線LANに接続できるようにします。
イーサネットコンバータのおすすめは、NEC Aterm WL300NE-AG。
イーサネットコンバータにも各社がいろいろな製品を出していて、様々な種類がありますが、安定して評価が高いのは、NEC Aterm WL300NE-AG という製品。価格は7000円前後です。
ネットワーク機器は24時間365日動き続けるものなので、安定度は第一です。Amazonのレビューを見てもわかるかと思いますが、これはかなり安定したプロダクトなのでおすすめです。Aterm WL300NE-AGとXS2008CA-BKの2つがあれば、Wifi環境しか使えなくても、Skypeフォンが使えるようになります。
Wifi環境のみではイーサネットコンバータが必要になるので、1拠点あたり17,000円(イーサネットコンバータ:7000円 + Skypeフォン:1万円)がかかりますが、それでも手頃でしょう。10拠点接続しても20万円の予算でお釣りがきます。
イーサネットコンバータを使いたくないなら、Skypeスマートフォンという手も。
イーサネットコンバータの7000円別途かかるというのが気になるのであれば、スマホタイプのSkypeフォンを使うという手があります。スマホタイプのSkypeフォンなら、標準でWifi接続をサポート(むしろ、有線LANがない)ので、イーサネットコンバータは不要です。
Skypeスマートフォンにどういうものがあるといえば、代表格はPChomeTalk。見た目は、そのままスマートフォンですが、Skypeで使うことに特化されています。価格は7,000円程度。
ただし、中国製なので日本語が使えるかどうかはわかりません。
日本語が使えるものであれば、Panasonicが以前、Skype対応Wi-Fiフォンを出していましたが、こちらは現在ではほぼ入手不可能かと思います。
古いiPhoneを使って固定電話にする
他の方法としては、古いiPhoneを使って固定電話にしてしまうという方法もあります。こちらはSkypeすら要らない。普通のiPhoneを3Gなど音声通話し放題で契約して、設置する感じですね。
使う環境はかなり選ぶかと思いますが、こういう方法もあるということで。
パソコン不要のSkype内蔵電話を選ぶチェックポイント
Skypeフォンについてざっと紹介しましたが、2015年現在ではこのような状況になっています。以前は各社がSkypeフォンを出していましたが最近は下火になっており、使えるデバイスはかなり限られている状況です。では、チェックポイントをおさらいします。
①インターネット環境は有線か無線(Wifi)か?
やはり、ネットワーク環境によって使う製品が左右されるのがとても大きいです。有線LANなら、XS2008CA-BK 一択でしょう。無線(Wifi環境)においても、Skypeスマートフォンなどの選択肢もありますが、XS2008CA-BK + Aterm WL300NE-AG(イーサネットコンバータ) が安心感、コスト、信頼性の面でバランスが良くベターだと思います。
②日本語に対応しているか?
Skype内蔵電話は海外製のものが多く、必ずしも日本語に対応しているとは限りません。通話だけなのでそれほど難しくはありませんが、「英語はちょっと…」「利用者のことを考えると日本語が安心」というときは日本語に対応しているSkype内蔵電話を選びましょう。
最後に、最大の注意点は「通話の音声品質」
そして、もっとも重要なのは「通話の音声品質」です。こればっかりは、ネットワーク環境や回線帯域、同時接続数、Wifiの電波環境、プロバイダや使っているルーター等によって様々です。同じ端末を使っても、通話環境に差が出るのはネットワーク環境による部分が大きいので、実際にその環境で試してみるまでわかりません。
複数の拠点などに導入する場合は、最小限の端末2台だけを用意し、いろいろチェックしてから、拠点数を増やしていくことをおすすめします。
また、2拠点では特に問題なかったけど、台数を増やしたら音声品質が下がる場合もあります。これはネットワークのトラフィック増加などによって起こる問題なので、安定した音声品質を望むのであれば、VoIP関連のネットワーク関連ソリューションを提供している技術者や専門家に事前調査を依頼したり、相談することをおすすめします。レイテンシチェックなども有効です。
もしも、音声品質がダメだったら、PHS型固定電話(イエデンワ2)も検討候補に。
「Skypeでの音声通話を試してみたけど、私の環境ではいまいち…」というときは、ワイモバイルが提供しているPHS型固定電話(イエデンワ2やスゴいデンワ)を使うことをおすすめします。インターネット回線ではなくPHSの回線を使えば、既存のネットワーク回線は一切不要で音声品質もほぼ問題ありません。乾電池駆動でも動くのでコンセントがない環境でも大丈夫。
イエデンワ2については、こちらをご覧になってみてください。イエデンワ2は、隠れた大ヒット商品です。
- イエデンワ2|その他の製品|Y!mobile(ワイモバイル)
- ASCII.jp:ケータイ電話の究極形「イエデンワ2」をモバイルで使う! (1/4)|このスマホ、ホントに買い? 話題のスマホ徹底レビュー
ワイモバイルのイエデンワ2の契約申し込みと購入方法
イエデンワ2は、今でもAmazonなら15,980円で買えますので、Amazonで買うのがおすすめです。これを買って、ワイモバイル回線を契約すれば、基本使用料1,450円 + 誰とでも定額980円で入手することができます。しかも、下記から申しこめば2台目以降の基本使用料は無料になるので、2台目以降は誰とでも定額980円で済むのはかなりリーズナブル。
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ワイモバイルから申し込みます。
ワイモバイル公式ショップから申し込むと、『2回線以降は基本使用料が無料』になるのでかなりお得です。Skypeの設定やネットワーク環境のチェックが面倒なら、余計なトラブルに巻き込まれずに済むイエデンワ2を使うのが一番簡単かもしれません。
2015年イエデンワ2の後継機、スゴいデンワが発売される!
さらに、2015年11月16日、エイビットの固定電話型ケータイ「スゴい電話」(AK-010)の販売を開始したとのこと。これは、イエデンワ2の後継機です。12月中旬出荷予定で予想価格は3万7800円前後とのこと。
スゴいデンワは、今までのPHSではなく、3G回線も使えるようになったのが大きな特徴。価格はイエデンワ2に比べるとややお高めですが、ルータとしても使えるようですし、環境によってはこちらを検討するのも良いかと。
- ASCII.jp:エックスモバイル、固定電話型ケータイ「スゴい電話」発売
- 月額980円から:ルーターにもなる固定電話型ケータイ――エックスモバイルが「スゴい電話」を発売 – ITmedia Mobile
こちらはややお高めなので、やはりイエデンワ2で十分だと思います。
固定電話をひかずに音声電話環境を構築するときのまとめ
では、まとめます。
- 固定電話がひけない時は、インターネット回線を使って、パソコン不要のSkype内蔵電話という方法がある。
- Skype内蔵電話は、有線LANと無線LANで使えるものがあるが、有線LANなら、TECO XS2008CA-BK がベスト。無線LAN(Wifi)環境の場合は、これにイーサネットコンバータ(NEC Aterm WL300NE-AG) を付ける。
- イーサネットコンバータを使いたくなければ、Skypeスマートフォンを検討。
- Skypeは音声品質が不安定なこともある。その時は、PHS型固定電話を使う。
- PHS型固定電話は、ワイモバイルのイエデンワ2はコストも安く、導入も手軽でかなりベストな選択肢。ランニングコストは少しかかるが、一番簡単に済みます。
といったところですね。Skypeにもイエデンワ2にもそれぞれメリットがあるので、必要に応じてご自身の状況にとってベストなものを選んで下さい。どちらも、カラオケボックスや貸しスペース、まんが喫茶などに室内電話を置きたいんだけど、電話回線をひく程でもないといったニーズに応えるかなり良いプロダクトだと思います。