新しいサービスやプロダクト(アプリ、ゲーム)を作ったときに、避けて通れないのが商品のネーミング(名付け)です。
しかし、スタートアップの新商品・新サービス開発の現場では設計・制作が忙しく、マーケティング担当者がいないような状況だとネーミングにかける時間がなかったり、優先度が下がりがちになります。
ちゃんとやりたいとは思っているけど、「たかが名前付けに、そんなに時間をかけられない!」というのは、多くの開発者が感じているところです。
そんな開発者のために、私なりの経験をまとめてみました。iPhoneアプリやスマホゲームの開発時に、ネーミングの参考にして下さい。
『名前』ってそんなに大事なものなのか?
ネーミングは本当に重要なプロダクトの一部です。
あるプロダクトの価値構成のうち、最低でも10%以上、中には50%の価値をそのプロダクトの名前が持っていることがあるくらいです。それだけ、ゲームやアプリと言った新商品、新サービスを作る人にとっては、商品名は重要なものです。
では、なぜ名前がそんなに重要なのでしょうか?
なぜなら、”名前1つで、その商品やサービスをリリースしたときの結果が変わるから“です。
例えば、あなたは今「英語の勉強ができるアプリを探している」としましょう。いろいろ探したら、次の3つの候補が出てきました。
- 「TOEIC対策」
- 「TOEIC英語対策」
- 「サクサク覚える! TOEIC英語対策」
あなただったら、どれをクリックしますか?
良い名前(ネーミング)とは何か?
良い名前とは、「それを使うユーザーにとって、自分が得られる価値が簡単にわかり、覚えやすい名前」です。
この定義の中には、複数の要素が含まれています。まずはそれぞれの要素を1つずつ見ていきましょう。
①得られる価値があること。
第一にやるべきことは、「この商品、サービスはユーザーにとって、どういう価値を得られるのか?」という質問を自分に対してすることです。そこで出てきた価値を基にして、ユーザーが得られる価値(ベネフィット)をイメージできる言葉を列挙していきます。
②わかりやすいこと。
開発者の発想は、機能を中心とした横文字のかっこいい名前をつけがちですが、その名前が効果的なのは、ユーザーもその機能を求めており、その言葉の意味が分かる場合というごく限られた状況のみです。
より多くの人に使われる為には、”ユーザーの日常の生活の中で使われる単語を組み合わせて名前を作る“必要があります。
③覚えやすいこと。
覚えやすさは、「わかりやすさ」と相関があります。なので、わかりやすい名前をつけていれば、結果的に覚えやすくなります。
更に覚えやすくする為には、”名前の長さを可能な限り短くする“と良い感じになります。
(+α)言いやすいこと。
わかりやすく、覚えやすい名前をつけると、結果的に言い易いという効果も生まれてきます。
ネーミングはこれらのポイントをふまえて、最終的に「アイコンもグラフィックも何もない状態で、名前だけを見たとき、自分が興味を持つ名前かどうか?」という判断基準で決めていきます。
ユーザーにとって、商品名とは何か?
対して、ユーザーが名前と接点を持つ状況には下記のようなものがあります。プロダクトの名前というのは、複数の状況でユーザーの行動に様々な影響を与えていることがわかります。
①アプリを探しているとき。
ダウンロードする前のユーザーは、名前とアイコンだけで、クリックして詳細を見るかどうかを判断しなければいけません。
②アプリを使っているとき。
ダウンロードをして、そのアプリを実際に使っているユーザーは、ホーム画面にそのアプリのアイコンと名前が表示されています。名前が長すぎると、途中で省略されて表示されてしまい、そのアプリが探しづらくなります。また、二次的な結果として、名前が省略されているので覚えづらくもなります。
③アプリを誰かに教えるとき。
既にそのアプリを使っているユーザーが、友達にそのアプリを教える状況について考えてみましょう。
悪いシナリオ
- 「あ〜、あのアプリなんだったっけ?」⇒ 名前が思い出せていません。
- 「(このアプリ凄い良いんだけど、話しづらい名前なんだよなあ…)」⇒ 人に話すのに、抵抗のある名前になっている。
良いシナリオ
- 「○○ってアプリ(ゲーム)やってるんだけど、知ってる?」「えっ、○○? 何それ!」⇒ ○○って聞いただけで、相手の興味を引ける。友達との話題になる。
詳細が知りたいから、その○○を検索キーワードにして、検索をするかもしれません。
「何にでも使える」ネーミングの作り方
ネーミングのやり方はいろいろありますが、なるべく時間をかけず効果的な名前にするには、この方法が役立ちます。
①とにかく価値を明確にする。
まずは、何にしても、今作っているアプリ、ゲームがユーザーに与えるベネフィット(価値)が何なのかを明確にする必要があります。この段階は、最低限の価値だけが表現されている段階です。
冒頭で紹介したTOEICアプリなら、「TOEIC対策」という名前になります。
②広い概念と狭い概念を組み合わせる。
最低限の価値は表現できましたが、何か物足りないはずです。
というのも、TOEICだけだと、TOEICを知っている人しかこのアプリを知ることができません。TOEICというのは、英語のテストの1つですから、TOEICの上位概念である、”英語“というキーワードも付け加えましょう。
こうすることで、TOEICは知らなかったけど、英語について興味がある人も、あなたのアプリを探せるようになります。
ここまでやると、冒頭で紹介したTOEICアプリなら「TOEIC英語対策」という名前になります。
③イメージを促す言葉(擬音)を使う。
最期に更にイメージをしやすくします。「びちゃびちゃ」「サクサク」と言った擬音は、人の想像を促す言葉です。これらの擬音がアプリやゲームの名前の中に入っていると、名前だけで更にイメージがしやすくなります。
擬音でなくても構わないのですが、人がイメージしやすくなる言葉を付け加えるということです。(サルでもできる!とか、流行りましたよね。)
冒頭で紹介したTOEICアプリなら、「サクサク覚える! TOEIC英語対策」という名前になります。
iPhone(AppStore)でのネーミングの抑えておきたいポイント
アプリ名は8文字以内or9文字ぴったりにする。
AppStoreの場合、9文字以上になると、…で名前が省略されてしまうので、9文字ぴったりか、8文字以下の名前で伝わるようにすると良いです。
最後に
どんなに一生懸命設計をし実装をしても、その価値をユーザーが理解できるのは、ダウンロードして実際にプレイをしてから。ダウンロードしてくれなければ、中身がどんなに良くてもユーザーには決してその価値は伝わりません。
名前というのは、ユーザーにダウンロードをしてもらうための非常に重要な要素です。価値をきちんと伝える為には、たかが名前ではなく、設計・実装と同じぐらいきちんと戦略的に考えて、名前を決めていきましょう。”プロダクトでも価値を伝え、名前でも価値を伝えること”が非常に重要です。
「ビジネスはかけ算。他がどんなに良くても、どこかが0なら、結果は0になってしまうものです。」
一生懸命作った価値を無駄にしないためにも、その価値がユーザーにも伝わるように、名前もしっかり設計してみて下さい。